ダン&レイビー『ここでもなく、いまでもない』(Not Here, Not Now)について

* スペキュラティブデザイン/SFプロトタイピングの流行を振り返りつつ、「未来」という語りの形式それ自体が、問題提起の内容やトーンを先回りして決めてしまう限界を疑う。 * ダン&レイビーが新刊の『Not Here, Not Now』で提示するのは、未来を語る前に〈いま・ここ〉(と、それを成り立たせる前提)を疑い直すという態度=〈非いま・ここ〉からの出発である。 * その態度を受け止めるための補助線として、椹木野衣による「悪い場所」や水村美苗論を引き、〈いま・ここ〉を異化する実践として読み替える。 「未来」という形式の限界 2010年代中盤頃からだろうか、「未来」という言葉がクリエイティブ業界──もしくはデザイン界隈?──のなかで持て囃され始めたことは、個人的には記憶に新しい。この現象は、ダン&レイビーというデザイナーのユニットが書いた『スペキュラティヴ・デザイン』(原著は2013年、翻訳は2015年に刊行)に端を発するものだろう。 スペキュラティブデザイン(Speculative Design)とは、思考するきっかけを与え、「問い」

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神楽坂のオフィスで、不定形なプロジェクトをかたちにしていく

* 2025年から神楽坂に小さなオフィス拠点を持ち、フリーランス3人で週に数日集まって働くようになった。 * クライアントも交えた共同制作を通じて、「まだ言葉になっていない課題」や不定形なプロジェクトの輪郭を定めていくことはスリリングで面白い。 * 編集とデザインを行き来しながら、媒体選定やリファレンス提示で収束をリードし、成果物として成立させる。 神楽坂の小さなチーム拠点で、共同制作のモードが戻ってきた 昨年(2025年)から神楽坂のオフィスを使っている。ただし所属などが変わったわけではなく、これまで通りフリーランスの身であるが、週に2〜3日ほどは通っている。これまでは基本的に自宅で作業していたため、同じ場所に通い詰めるだけでも新鮮さがある。家から30分足らずで着くのでアクセス上の不便もない。 この場所は、自分を含めて三名のフリーランサーで利用している。プロマネ(PM)に強いディレクター/編集者の瀬下翔太と、コピーライティングやコンセプト立案に強いライターの松本友也と、そして自分の三名だ。彼らとは学生時代から長いあいだ制作をともにしてきたが、仕事面ではコロナ禍の頃か
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ハッキング、エレガンス、ヴァナキュラー

* 橘玲の小説『HACK』に見られるように、ハッキングは「テクノロジーの、洗練された破壊」としてのエレガンスを持つ。 * しかし、情報社会の美学は変化し、ニュートラルなフォントや標準設定を意図的に使用するデフォルト主義が現れた。この変化は、スマートフォンやビッグテックの登場により、情報社会が技術的な専門家(ハッカー)だけのものではなくなったことと関連する。 * 現代のユーザーは「チューリング完全ユーザー(TCU)」と呼ばれ、その者たちは表計算ソフトで名刺をレイアウトするなど、汎用的なツールを本来の目的に関係なく巧みに使い、「個性的なデジタル・ヴァナキュラー」を形成している。 橘玲『HACK』に見るハッキングと国際情勢 「世界はHACKされるのを待っている/バグだらけのシステムだ」 そんなエピグラフに始まる冒険小説を読んだ。橘玲『HACK』、つい2週間ほど前に出た新刊だ。自分なりにあらすじを整理してみると、ビットコインで儲けた脱サラハッカーがシンガポール駐在の検察官に気に入られ、東南アジアと東アジアをまたにかけたスパイ活動を民間人としてさせられる、みたいなもの。 本作には
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